
職場の人間関係がめんどくさいです。
どこの世界でも、こんなに面倒なものですか…?
この記事では、このような悩みにお答えします。
本記事の内容
- 日本の職場の人間関係が面倒なたった一つの理由
- 日本とアメリカの組織の違い
職場の人間関係には、かなり気を使いますよね。
人間関係がうまくいけば仕事もスムーズにいくので「仕方なし」と、仕事をしている人も少なくないのでは。
私は日系、外資系で働いたことがあります。
でも外資系企業では、日本ほどの「ウェットさ」がありませんでした。



なんで?何が違うの?
この記事では、日本の職場が面倒くさいと感じる理由を、アメリカの組織と比較しながら解説します。
今回は、こちらの本を参考にしています。
パッと見少々お堅めな印象はありますが、かなり共感できる内容だと思います。



日本の職場で人間関係がめんどうくさいと思うのは、
日本の組織構造に原因があります。
自分の所属する組織を思い浮かべながら、ぜひ読んでみてください。
日本の組織は、人間関係中心に動いている


日本の組織は、戦略や目標があいまいで「人的ネットワーク(メンバー間の間柄)」を中心に動く傾向があります。
一方、アメリカの組織では戦略・目標が明確で、組織内の人間がシステマチックに動きます。
以下で、詳しく見ていきましょう。
日本とアメリカの組織の違い
下記の表は、第二次世界大戦時の日本軍とアメリカ軍の戦略・組織特性を比較したものです。
▼日本軍と米軍の戦略・組織特性比較
項目 | 日本軍 | アメリカ軍 |
---|---|---|
目的 | 不明確 | 明確 |
戦略志向 | 短期決戦 | 長期決戦 |
戦略策定 | 帰納的 | 演繹的 |
戦略オプション | 狭い | 広い |
技術体系 | 豪華一点主義 | 標準化 |
組織構造 | 集団主義 | 構造主義 |
組織統合 | 属人的統合 | システムによる統合 |
組織学習 | シングルループ | ダブルループ |
評価 | 動機・プロセス | 結果 |
私は外資系企業で働いていた時、「日系企業と外資系企業の違いって、まさにこれだな…」と、何度も感じたものです。
▼外資系で働いていて、強く感じたこと
- 目的が明確
- 仕事が標準化されている
- 一人一人の業務範囲と役割が明確
- 「結果」で評価される
一人一人の業務範囲と役割が明確なので、それを効率的にやれば「評価」されます。
業務が高度に標準化されているので、手順書も揃っていて、効率化ツールも数多くありました。
各自淡々と自分の仕事をこなしていけば、組織全体として仕事は回ります。
ウェットな人間関係を構築する必要がないんですよね。
日本の組織における9つの特徴





日本の組織と海外の組織には、どんな違いがあるの?
『失敗の本質』は、日本軍とアメリカ軍と組織構造の違いを比較し、作戦が失敗した理由を組織構造の観点から考察したものです。
これらの特徴を読むと、現代の日本企業にも通じるところが多く、「わかる、わかる」とリアルに共感できるはずです。
では、一つずつ紹介していきましょう。
目的があいまい
いかなる軍事上の作戦においても、そこには明確な戦略ないし作戦目的が存在しなければならない。
「戦略上の失敗要因分析」より
目的のあいまいな作戦は、必ず失敗する。
一つめは、組織の目的があいまいなことです。
当時の日本軍の作戦計画は大まかで、細部については、中央部の参謀と実施部隊の参謀との間の打ち合わせによって詰められることが通例だったそうです。
それぞれが目的を勝手に解釈し、作戦目的の価値観が統一されていませんでした。



あなたの会社は、どうですか?
長期的な戦略がない
短期決戦思考の戦略は攻撃重視、決戦重視。
「短期決戦の戦略志向」より
情報、諜報に対する関心の低さ、兵力補充・補給の軽視がみられる。
二つめは、長期的な戦略がないことです。
あなたの会社では、周りの会社に合わせて適当に「これからの時代は DX が重要だ」とか言っていませんか?
本当に重要だと思っているなら、今すぐにDXに強い中途社員を積極採用すべきですが、特に採用活動に力を入れるわけでもなく…。
また、情報に対する関心の低さも日本の組織の特徴。関心が低いので、必要な情報が組織全体に共有されません。



情報が入ってこないから、余計に人間関係が重要になってくるんですよね…。
その場の「空気」で戦略を立てる
日本軍の戦略策定は一定の原理や論理に基づくというよりは、
「主観的で機能的な戦略策定ー空気の支配」より
多分に情緒や空気が支配する傾向がなきにしもあらずであった。
「科学的」なアプローチでなく、「精神論」「神話的思考」で戦略を立てがちなのも日本の特徴です。
「信念」や「やる気」さえあれば何とかなるという空気が、いまだにあるように感じます。
日本企業では、いまだにパワハラを「やる気の表れだから、問題ない」と勘違いしている人はいませんか。
厚生労働省の『データで見るハラスメント』をみる限り、パワハラは全く減る傾向がありません。
▼都道府県労働局等への「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数





いじめられないように気を使って働いている人は、一体どのくらいいるんだろう…。
戦略に柔軟性がない
視野の狭小化、想像力の貧困化、思考の硬直化が、戦略の進化を阻害し、
「狭くて進化のない戦略オプション」より
戦略オプションの幅と深みを制約した
日本軍は、兵員に猛特訓させて戦闘力を上げました。
しかしこれは「必勝の信念」という精神主義と相まって、軍事技術の軽視をもたらしました。
明らかに人数が足りていないのに、人材を補充することなく社員に長時間労働を強いたり、業務効率化・自動化を検討しようとしない企業に似ています。



人材の流動性がないのも、視野の狭小化、想像力の貧困化、思考の硬直化を生んでいる気がします。
何か一つに固執して、全体が見えていない
ある部分は突出して優れているが、他の部分は絶望的に立ち遅れている。
「アンバランスな戦闘技術体系」より
何か一つのことだけに注目しすぎて、本来の目的や進むべき道を見失う傾向があります。
「大和」や「武蔵」という最先端の軍艦を作ったものの、持てる力を出し切れず海底に没してしまいました。
その他の兵器やシステムが未熟であり、全体として機能しなかったからと言われています。



最近よく聞く「高度人材」の活用も、これと同じ状況に陥らないといいですが。
人間関係偏重の組織構造
日本軍の組織構造で重視されるのは、
「人的ネットワーク偏重の組織構造」より
組織目標と目標達成手段の合理的、体系的な形成・選択より、
組織メンバー間の「間柄」に対する配慮である
日本の職場の人間関係が面倒くさい最大の理由は、組織メンバー間の「間柄」に対する配慮が重要だから。
まさにこれが一番の原因です。
日本の組織は、ピラミッド構造の組織に情緒性を混在させ、インフォーマルな人的ネットワークが強力に機能します。
属人的
作戦行動上の統合は一定の組織構造やシステムによって達成されるより、
「属人的な組織の統合」より
個人によって実現されることが多かった
大規模な作戦を計画、準備、実施するには、あらゆる力を統合し、一貫性、整合性を確保しなければなりません。
米軍はその点、優れた統合能力を発揮し、日本軍を圧倒したと言います。
一方、日本軍は作戦目的もあいまいだし、力を統合する方法も属人的でした。
人事に関して合理的な理由もなく、インフォーマルな人的ネットワークにより決まることも。
海外の組織では、「経験・実績もないのに大抜擢」などありえません。
学習を軽視した組織
日本軍には、失敗の蓄積・伝播を組織的に行う
「学習を軽視した組織」より
リーダーシップもシステムも欠如していた
総力戦で戦うなら、失敗しても組織全体で学習することが不可欠。
しかし、日本の組織では自由闊達な議論が許容されず、情報は個人や少数の人的ネットワーク内部にとどまっていました。
対人関係や人的ネットワーク関係に対する配慮が優先し、失敗の経験から積極的に学びとろうとする姿勢がなかったのです。
事実を冷静に直視し、情報と戦略を重視する米軍の組織学習を促進する行動様式に対して、日本軍はときとして事実よりも自らの頭の中だけで描いた状況を前提に情報を軽視し、戦略合理性を確保できなかった。
『失敗の本質』p.328



「吞みニュケーション」で話す会話って、結局、その人の頭の中で描いたことを適当に言ってるだけだよね。
意思決定がブラックボックス化しているし、何ら合理性もないね。
プロセスや動機を重視した評価
日本軍は結果よりもプロセスを評価した。
「プロセスや動機を重視した評価」
個々の戦闘においても、戦闘結果よりはリーダーの意図とかやる気が評価された
これはもう、説明するまでもないですね。
- 個人責任の不明確さが、評価をあいまいにする
- 評価のあいまいさは、論理よりも声の大きなものの突出を許容する
- この結果、作戦結果の客観的評価・蓄積がしづらくなる
70年以上経っているのに、日本の評価制度は驚くほど変化していません。
外資系企業は気になるが…


いかがでしたでしょうか。
日本企業で人間関係が面倒くさいのは、インフォーマルな人的ネットワークが働き続けるのに必要不可欠だからです。
もちろん外資系企業でも人的ネットワークは重要です。
(役職が上になるほど、人的ネットワークが重要になるなのは、日本と変わらないでしょう。)
ただ、外資系企業の組織は「目的」を中心に動いていて、「人間関係」は二の次なので、そこまでドロドロしません。
そもそも仕事仲間が海外にいたりするので、吞みニュケーションもできないですしね。
英語は必要?



外資系企業は気になるけど、「英語」が必要でしょ?
ただ、外資系企業に入るとなると、気になるのが「英語力」。
正直にお伝えすると、確かに外資系企業では多少の英語力は必要です。
でも、帰国子女並みの英語力は不要。「外資系企業が気になるけど、英語を勉強しないとな…」と思ったら、英語の勉強をちょっとずつ始めてみてください。
外資系に向いているか分からないとき
上記で紹介したとおり、日本の組織とアメリカの組織はかなり異なります。
なんだかんだ言って、日本人にとっては日本の組織の方が居心地がいいのかもしれません。
ただ、日本人の中にも、私のように「外資系の方が居心地がいい」と感じる人もいます。
外資に向いているか分からないときは、「外資系に向いてる人」ってどんな人?を参考にしてみてください。
おわりに
この記事では、日本の職場の人間関係が面倒くさいと感じる理由を解説しました。
人間関係が面倒だと感じるのは、日本の組織は人間関係を過度に重視する情緒主義的なところがあるからです。インフォーマルな人的ネットワークが仕事に大きな影響力をもたらすため、日本人は仕事において人間関係を非常に重視します。
海外の組織では、日本ほど人間関係が仕事に影響を与えません。もし、日本の組織における人間関係が面倒くさくて耐えられないなら、海外の組織で働くのを検討してもいいかもしれません。
人間関係のストレスに耐えたところで、転職に有利になる仕事のスキルや能力が上がるわけでもありません。
状況が改善される見込みがないなら、環境を変えていきましょう。